最近読んだ中でダントツでおもしろかった本。
道尾秀介さんの小説「きこえる」。
ここ一年ぐらい、ズバ抜けておもしろいと思える本と出逢えていなかった中、久々のヒットだ。
単にストーリーとして“おもしろい”というだけでなく、《小説》というジャンルを底上げしたような、新たな“趣き”が宿っていて、従来の小説ファンはもちろんのこと、活字が苦手だ、という人にまでその楽しさは伝わるのではないだろうか。
むしろ、普段本は読まないよ、という人にこそハマるかも知れない、と思っている。
おそらく様々なところで本書の良点を細かにレビューしている人がいると思うので、あえて私はここでは省くが、「小難しそう」「とっつきづらい」といった印象を持っている人でも、ただ“読む”のとは違う、この小説の“鑑賞”方法をまず見れば、少しは興味が抱けるはず、とだけ書いておく。
クオリティを下げているわけでなく(むしろつくりは巧みで堅実)、敷居のみを下げて読者層を広げるという離れ業、エンターテインメントの鑑、などと称しては些か持ち上げ過ぎだろうか。
けれど、進行していく活字離れにブレーキを掛ける、その一躍を担える可能性をふんだんに持ち合わせている作品であることは間違いない。
工夫や研鑽などといった言葉では収まり切らない緻密さが、物語にある。
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■今日の一曲
水中、それは苦しい「ホタルイカの光」
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